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仙台高等裁判所秋田支部 平成4年(ネ)33号 判決 1993年12月20日

平成四年(ネ)第三三号事件控訴人

同年(ネ)第二九号事件被控訴人

(第一審原告)

高坂義秀

右訴訟代理人弁護士

白澤恒一

平成四年(ネ)第二九号事件控訴人

同年(ネ)第三三号事件被控訴人

(第一審被告)

右代表者法務大臣

三ケ月章

右指定代理人

中條隆二

外五名

主文

一  第一審原告の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

1  第一審被告は第一審原告に対し、金三三〇万円及びこれに対する平成二年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  第一審原告のその余の請求を棄却する。

二  第一審被告の控訴を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを三分し、その一を第一審被告の負担とし、その余は第一審原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  第一審原告

1  原判決中、第一審原告敗訴の部分を取り消す。

2  第一審被告は、第一審原告に対し、金九六八万五六九三円及びこれに対する平成二年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  第一審被告の本件控訴を棄却する。

4  訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

5  第2項及び第4項につき、仮執行宣言

二  第一審被告

1  原判決中、第一審被告敗訴の部分を取り消す。

2  第一審原告の請求を棄却する。

3  第一審原告の本件控訴を棄却する。

4  訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。

5  担保を条件とする仮執行免脱宣言

第二  主張

当事者双方の事実上の主張は、次のとおり付加するほかは原判決事実摘示と同一(ただし、原判決二枚目裏七行目「同支部裁判官」を「右執行裁判所」と改める。)であるから、これを引用する。

一  第一審被告

原判決一〇枚目表九行目冒頭から同一一枚目表一行目末尾までを、抗弁(過失相殺)として主張する。

二  第一審原告

第一審被告の付加抗弁は争う。

第三  証拠<省略>

原審及び投資証拠目録記載のとおりである。

理由

当裁判所の判断は、次のとおり改め、かつ、当審における付加抗弁についての判断を加えるほかは、原判決の理由記載と同一であるから、これを引用する。

一請求原因2及び3について

1  原判決一三枚目表四行目「原告」の前に「原審及び当審における第一審」を加える。

2  同一九枚目表九行目「赴いて」の後に「本件報告書等」を挿入する。

3  同二〇枚目表末行「残代金納付の前後ころ」を「残代金納付から数日後に」と改める。

4  同二二枚目表初行「おける」を「新しい制度として導入された」と改め、同行の「その」の後に「形状・占有関係その他の現況を正確に調査することにより、右不動産の」を挿入する。

5  同二三枚目裏初行「としては」の後に「、本件土地の所有者からその所在する位置関係につき説明を得ることが困難であったし、それが期待できなかったのであるから、前記斉藤係長の案内を求めるよりも以前に、本件土地と境界を接する各土地の所有者について事情聴取をするなどの本件土地の位置関係を確認する方法を考えるべきであったといえるし、仮に、前記認定の経緯から象潟町役場の職員に現地の案内を求めたことが有効な方法と考えたにしても、右案内に当たった斉藤係長に対し、同係長が前記役場において、本件土地周辺地域になんらかの関わりのある事務を担当した経験を有する人物であるものかどうか、少なくとも、同人が本件土地についてどのような経験から、どの程度の知識を有している人物であるかなどその適格性を確かめ、その案内の正確性の確認についても配慮すべきであったし、同係長と現地に赴いた際にも、」を挿入する。

6  同二六枚目裏七行目「原告は、」から次行の「あるから、」までを、「前記認定の第一審原告と本件共有者らとの間で成立した和解条項によれば、第一審原告は、本件建物の建築前にさかのぼってその基礎部分に利用した廃屋についてこれが本件共有者らの所有であることを確認した上で、本件建物の建築後これを不法占有しているものであることを認めて回復者である本件共有者らの要求に応じて本件建物を返還することを合意したことが明らかであるから、本件建物の返還によってその築造に係る原材料等の費用相当分の財産的損害を被るというからには、その返還にあたり、」と改める。

7  同二七枚目裏三行目「原告が、」から同五行目「あるから、」までを、「第一審原告の原審供述によると、第一審原告は、本件土地の買受け以前から、当時の住居地の青森市を引き払って自然の中で生活するに適した転地先を探していたところ、たまたま所用で訪れた本荘市の旅館で、新聞の折り込みチラシの類の広告で本件土地が競売になっていることを知り、単純にその所在地が予てからの希望に適っていたことからこれを買い受けしようと思い立ったというのであり(前示本件共有者らとの和解によって一番三の土地を明け渡した後は、本件土地に建物を移築して引っ越しするとも述べている。)、仮に一番三の土地との取り違えがなかったとしても本件土地を買い受けていたことには変わりはなかったものと認められるから、」と改める。

8 同二九枚目裏末行冒頭から同三〇枚目裏二行目末尾までを「第一審原告本人尋問の結果によれば、第一審原告及びその妻勢津子が本件建物の築造作業に従事した事実が認められる。第一審原告は阿部執行官の不法行為により右の作業(労働)が無為に帰したものとし、これを損害と捉えて、その賠償を求めているが、その主張する損害(労務費用相当額)を的確に算定する資料は見出せないから、本件においては、これをその主張の項目の損害としては認めない。後記慰謝料の額で斟酌するのを相当とする。なお、勢津子の被った損害について、第一審原告がその賠償請求をすることはできない。」と改める。

9  同三〇枚目裏三行目及び末行の各「一〇〇万円」を、いずれも「三〇〇万円」と、同三一枚目表二行目及び六行目の各「一〇万円」を、いずれも「三〇万円」と改める。

二当審における付加抗弁(過失相殺)について

競売土地を買い受けしようとする者について、当該土地の現況、権利関係のほか、場合により境界などの調査、確認等の調査義務があることは第一審被告も主張するとおりであるが、本件土地の買受人たる第一審原告は、先にも説示したとおり、競売物件たる本件土地の形状や占有等の事実状態その他の権利関係に関する現況について正確な調査がなされたものとして閲覧に供された本件報告書の記載によって本件土地の所在地や現況について確認したものであって、その本件土地の現状として記載された内容について格別買受希望者が不審を抱くような点があればともかく、それがなかった以上、第一審原告が本件報告書の記載を信頼したのは至極当然のことであるから、第一審原告自らに要求される調査義務としては、これにより十分であったということができるし、本件全証拠によっても、第一審原告が阿部執行官がなした調査よりも正確な調査をなし得たことを窺うべき事実は存しないから右抗弁は理由がない(仮に、第一審原告が、本件報告書の記載のみを鵜呑みにしたことがその一番三の土地と本件土地とを取り違えた原因であるとしても、これは、もともと第一審原告が、右報告書の記載中、とりわけ本件土地の現況に関し、本件土地には存在する筈のない廃屋が存在すると記載されたことに誤りはないと信じたことによるものであることは前記認定のとおりであるから、いわば誤った情報を提供したことによって第一審原告の右の誤信の原因を作出した側にある第一審被告が、その結果誤信に陥った第一審原告の過失を主張することは、自らの非を他に転嫁するものであって信義則に違反し、かつ、損害賠償訴訟において、発生した損害を当事者間で公平に分配するために行われる過失相殺の趣旨にも悖るといわなければならない。)。

よって、第一審原告の本訴請求は、第一審被告に対し金三三〇万円及びこれに対する平成二年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で正当として認容し、その余は失当として棄却すべく、これとその趣旨の一部を異にする原判決を第一審原告の控訴に基づき主文のとおり変更し、第一審被告の控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条を適用し、なお、仮執行宣言については、相当でないのでこれを付さないこととして主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官武藤冬士己 裁判官和田丈夫 裁判官佐藤明)

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